奥村健治アコースティックギター製作 IN ロンドン

ロンドン在住の個人製作家によるギター製作ブログ

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諸悪の根源はどこだ?!奴を探し出せ!!

先日行なったリペアーの話です。

もう2週間ぐらい前の話ですが、リペアーをやっているギターショップ、Ivor Mairants に行くと、Santa Cruz のギターがリペアーで持ち込まれていました。モデル名は OM/PW で、OM の戦前のモデルを基調としたものです。トップはオレンジっぽいサンバーストで、このギターは先月行われた The London Acoustic Guitar Show 2013 で Ivor Mairants のブースに展示されました。

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このギターを購入されたのはプロのギタリストで、リペアーに持ち込まれる数日前に購入したばかりでした。ショップで試奏する時には何も問題を感じなかったそうですが、購入後、スタジオで弾いていると、2弦を弾くとどこからか弦のビビリとは違う音がするというのです。弦のビビリにしろ、他の音にしろ、音を発する原因はどこかにあるはずです。まずはその原因を見つけ出さないといけません。

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まずギターを弾いてみましたが、ネック状態は良好で、フレットの高さは均一で、ネックリリーフ(1フレットとネックジョイント辺りの両方で弦を押さえ、7、8フレット辺りでのフレットと弦の隙間、若干の順反りが良い)もちょうど良い数値です。ネック角(ネックがボディとジョイントしている角度)も申し分ありません。弦高もちょうど良い高さで、弦のビビリはありません。ただギターの持ち主が言うように、2弦を弾くと小さなカラカラした音が聞こえます。耳を澄ませないと分からない程度の小さな音ですが、確かにどこからか聞こえてきます。

さて、弦のビビリ以外で音がする場合、考えられる原因は、何かが剥がれている、外れている、または緩んでいるため、弦の振動する音に共鳴しているのです。これは各弦の振動する周波数によって共鳴したりしなかったりします。このギターの場合は、2弦のB 音の周波数に何かが共鳴しているのです。

以前の記事で書いたことがあるのですが、ギブソンのギターの場合は、ブリッジがボルトとナットで留めてあるモデルがあり、ボディ内にあるナットが緩んで共鳴することがあります。でもこのギターのブリッジにはボルトもナットもありません。

もしかしたらボディ内のブレースの剥がれかと思ってトップとバックを指でタッピングしてみますが、どこを叩いてみてもソリッドな固い音しかしません。もしブレースの剥がれがあれば、タッピングすると鈍い音がします。念の為に、ボディ内のブレースをチェックしましたが、剥がれは全くありませんでした。

次に考えられる箇所は、チューニング・マシーンのボタン(つまみ)です。このボタンがグラグラとぐらついていると、これが共鳴してカラカラした音を発することがあります。6個のボタンを全部チェックしましたが、全てビクともしません。チューニング・マシーンは私が大好きなゴトー製なので、これに問題が無くて良かったです。因みに、こういったアメリカのビンテージモデルのチューニング・マシーンには、Waverly が使用されている場合が多いのですが、このギターにはゴトー製が使用されていました。嬉しいですね。でもショップに飾ってある他の Santa Cruz のギターは全部 Waverly 製でした。ゴトーがいいのに(私の勝手な意見なので無視して下さい)。

アーチトップのギターなどの場合は、ピックガードやピックアップのマウントリングのネジが緩んでいて共鳴することがあります。でもこのギターにはそれらは取り付けてありません。

「一体原因はどこだ!!」

このカラカラと共鳴する音がどこから出ているのか、それを発見しなければ修理は出来ません。そしてギター全体をタッピングして鈍い音がするところをついに発見しました!

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そうです。ネックの後ろです。ここを叩くと鈍い音がします。念の為に、ショップに飾ってある Santa Cruz のギターを3本チェックしてみました。ネックの後ろを叩くと、3本全部ソリッドな固い音がします。この鈍い音は何かというと、ネック内にトラスロッドの音なのです。つまり、トラスロッドは締めてあっても締めてなくても、ネック内で固定されていないといけません。何が原因でこうなったかは定かではありませんが、確かにトラスロッドが固定されていないために起こっている音だと思いました。

さて、これをどうするか考えました。トラスロッドを固定させるには、反りを入れてあげることだと思いました。ちょっと反らせることで固定出来るのではないかと。ただ問題は、弦高はちょうど良いし(私が通常セットアップする弦高と同じ高さで、6弦側が6/64インチ、1弦側が4/64インチです。下の写真を参照)、ネックリリーフもちょうど良いのです。

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しかし、若干反らせば、トラスロッドは固定され、共鳴音はなくなるはずです。というか、まだ確信はありませんが、そうなるはずです。

それでトラスロッドを時計回りにほんの僅かだけ回すことにしました。弦高も低くならず、ネックリリーフも小さくならない程度です。トラスロッドに使うレンチは、Santa Cruz Guitar Company よりショップに提供されて専用のレンチです。正直言って、私はこのレンチがあまり好きではありません。下の写真でも分かるように、回る棒の部分がバネみたいになっているからです。これは Santa Cruz のトラスロッドはボディ内で調整するようになっており、回転させる棒に柔軟性を持たせて、サウンドホールからの作業をやりやすくするためです。しかし、トラスロッドのナットが固い場合、ナットは回らずに、バネの部分だけが回転してねじれてしまう場合があります。しかし、これを使うしかありません。トラスロッドのナットがスムーズに、そしてほんの僅かだけ回ることを期待してレンチを回しました。

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「回った!」

トラスロッドが回りました。ほんの僅かです。ネックの状態が殆ど変わらない程度です。

ネックの後ろを叩いてみました。

「やったー!!音がソリッドだ!」

もう鈍い音ではありません。絶対にこれがカラカラ鳴る音の原因だったはずです。そう確信しましたが、弦を鳴らすまでは分かりません。そして弦を鳴らしました。

「直った!!」

2弦を弾いた時のカラカラした音は無くなりました。嬉しいです。しかし、問題はまだ終わっていません。ネックを若干反らしたことによる、弦高とネックリリーフの変化をチェックしないといけません。弦高が低くなり、ネックリリーフが小さくなると弦のビビリが起こる可能性があるのです。

弦のビビリは起こりませんでした。写真はありませんが、弦高はほんの僅か低くなっただけです。数値で言えば、6弦側が5.8/64インチ、1弦側が3.8/64インチぐらいでしょうか。ネックリリーフの変化も許容範囲内でした。

さて、その日の夕方に、ギターの持ち主がギターを取りに来ました。ギターを試奏してもらい、修理に満足してもらったのですが、私は正直に弦高の若干の変化を話しました。そして最初の弦高が気に入っているのであれば、サドルの下にシムを敷いて弦高を上げることを提案しました。シムはブリッジと同じエボニーで、2枚用意し、1枚の厚さは1/64インチです。1枚使用すれば弦高が1/128インチ上がり、2枚使用すれば、1/64インチ上がる計算です。持ち主の方は是非お願いしますということで、次の週に用意することにしました。シムを敷くことで音に変化があるかという質問をされましたが、私の個人的な意見として、ブリッジと同じ材のエボニーのシムならば、音に変化はないと答えました。そして使ってみて、どうしても違和感があるようであれば、新しくサドルを作るということで合意しました。

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今回も文章を簡単済ませようと思って書き始めたのですが、またまた長文になってしまいました(笑)。こんな長い文章だから、このブログは一般受けしないんですね。

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  1. 2013/10/14(月) 03:07:47|
  2. リペアー
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プロフィール

奥村健治

Author:奥村健治
アメリカでギター製作を学び、現在イギリス・ロンドンにてアコースティックギター製作に励んでおります。長崎県佐世保市出身

Santa Cruz Guitar Company, Bourgeois Guitars, Lowden Guitars の英国でのリペアーマンもやっています。

www.okumuraguitars.com
www.okumuraguitars.tumblr.com
https://twitter.com/okumuraguitars
https://instagram.com/okumuraguitars/

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