奥村健治アコースティックギター製作 IN ロンドン

ロンドン在住の個人製作家によるギター製作ブログ

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急に舞い込んだ Martin 000-28 のリペアー

数日前、急なリペアーの仕事が舞い込みました。ギターは Martin 000-28 です。依頼主から電話があった時、現在修理中の別のギター(サンタクルーズ)についての質問かなと思ったのですが、話の内容は違っていて、Martin 000-28 の新品をあるところから買おうかなと思っているのだが、コンディションが良いかどうかチェックしてくれと言うのです。私の判断で買うかどうか決めたいということでした。新品なのですが、3、4年間売れず、値段は値下げされており、2000ユーロ(約25万円)(なぜユーロなのかは聞きませんでした)になっているということでした。電話の会話から30分後、依頼主が工房にギターを持って来られました。

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早速ギターをチェックしたのですが、まず音色には問題がありません。というか、このクラスのギターになると音が良いのは当たり前で、あとは弾き手がその音を好きかどうかということになるので、私がとやかく言うことではありません。私が注意しなければならないことは、構造上の問題があるかどうかということです。

まず直ぐに気づいたことは、弦高が若干高いということです。次にネックの反り具合ですが、真っ直ぐ過ぎて、ネックリリーフが殆どありません。ネックリリーフに関しては、このブログで何回も書いていますが、ネックは完全に真っ直ぐだと、弦がビビってしまいます。弦は振動して音を発します。振動にはある程度の幅があるため、ネックが真っ直ぐだと、振動する弦がフレットに触れてビビってしまうのです。ネックリリーフをある程度持たせる(ネックを順反りにする)ことにより、振動する弦がフレットに触れることを防ぐのです。このネックが真っ直ぐ過ぎるということが原因で起こっていたのが、4弦と6弦が1フレットから4フレット辺りまでビビるということでした。フレットの高さの不揃いは無かったので、おそらく、ネックが真っ直ぐ過ぎてビビっているのだと思われます。

仕事はもちろん引き受けることにしたのですが、依頼主は、出来れば今日中に仕上げてくれないかと言うのです。時間的には可能なのですが、他の仕事を中断しなければならないので難色を示すと、余分にお金を払うと言うのです。この依頼主からは別に大きなリペアーの仕事を請け負っているし、そのリペアーが終わったらカスタムギターの製作依頼を受けているということもあり、私が折れて依頼を承諾しました。その時の時間が午後2時頃で、午後5時ぐらいには終わらせるので、終わったら私から連絡をするということになりました。

さて、いよいよ仕事に取り掛かり、まず全弦を緩めました。やはり思ったとおり、弦を緩めると、ネックは逆反りになりました。ギターショップのスタッフが、弦高を低くするためにトラスロッドを締めたのかもしれません。弦高を低くする イコール トラスロッドを締めるではありません。トラスロッドを締めるには、その締める正当な理由がなければなりません。こうやって間違ったトラスロッド調整がされているギターにはよく遭遇します。この 000-28 もトラスロッドが締められて逆反りになっているので、トラスロッドを緩め、まず真っ直ぐの状態にします。そこでボディー内のネックブロックにあるトラスロッドを緩めようと六角レンチを入れたところ、トラスロッドのナット部分に六角レンチが届かないのです。

「えー!届かない!」

トラスロッドを緩めない限り、この仕事は出来ません。ボディー内のトラスロッドがどんな感じで装備されているのか覗いてみることにしました。それが下の写真です。

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ご覧のように、ネックブロックにはエクステンションのブロックがあり、手前のブレイスの穴からしかトラスロッドが調整出来ないような仕組みになっています。早速インターネットで調べてみると、最近のマーティンのギターは、最低でも4インチ半の長さがある六角レンチが必要だと書いてあります。マーティン社のウェブサイトでは、長い六角レンチが必要なので、マーティン公認のリペアーマンに頼めと書いてあるのです。

「どうしよう?」

依頼主に連絡をして、長い六角レンチを入手するまでは調整が出来ないと伝えようかなと思ったのですが、ふとある事を思い出しました。毎週木曜日にリペアーをやっているギターショップには長い六角レンチがあることを思い出したのです。その時点で既に2時45分ぐらいになっていました。どうするか迷いました。ギターショップまで取りに行っても、通常使っているバスならば、往復2時間以上は掛かります。そうすると戻って来るのが5時ぐらいになってしまい、かなり遅くなってしまいます。しかし取りに行くことにしました。途中で地下鉄に乗れば、往復1時間半で戻って来ることが出来ます。

工房へ戻って来たのは4時半過ぎでした。依頼主からはバスの乗車中に連絡があり、5時ぐらいに終わるかと聞かれました。六角レンチの説明をし、ちょっと遅れると伝えました。工房へは5時半ぐらいに来るということで、もし終わっていなくてもその場で待つということになりました。

ギターショップから持って来た六角レンチが下の写真です。これなら十分な長さがあります。

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やはりトラスロッドは締めてありました。緩めてネックを真っ直ぐな状態にしました。

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ネックを真っ直ぐな状態に戻したので、これに弦を張れば丁度良いネックリリーフが得られ、弦高調整をすればビビりの無い良い状態になるのかもしれません。しかし、もしビビったらということを想定することにしました。時間もあまり無いので、最初からビビリが発生することを前提とし、二度手間にならないようにしました。

このマーティンの 000-28 も最終フレットに向けて fallaway が施されています。私の場合は、ネックジョイント(この場合は14フレット)から徐々にフレットの高さを低くしていくのですが、このギターの場合は、17フレット辺りから低くなっています。これでも弦がビビらないことはあるのですが、場合によっては、ネックが前倒しになると、15から17フレット辺りのフレットの高さが高くなり、特にネックが順反りしていると、弦の振動がこの辺りに当たって弦がビビることがあります。それで弦を張る前に、14フレットから徐々にフレットの高さを低くすることにしました。

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フレットの高さは14フレット(ネックジョイント)から徐々に低くなり、フレットの形状を整えて fallaway 加工の終了です。

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ナット溝は1弦と2弦が高かったので、溝を深く削って調整しました。

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サドルの高さ調整をして丁度良い弦高にしました。

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丁度良い弦高です。

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ネックを真っ直ぐにして弦を張ると丁度良いネックリリーフが得られ、サドルを削って弦高を低くしました。適度なネックリリーフがあるので、最初にビビっていた4弦と6弦の1フレットから4フレット辺りの問題は解消しました。全フレットをチェックしましたが、ビビりは全くありません。これで依頼主も喜んでくれることでしょう。

修理が終了してから間もなくして依頼主が来られました。ギターの状態に大満足です。ギター購入決定です。トラスロッドまで届く六角レンチが無いと分かった時はどうするか迷いましたが、わざわざギターショップまで取りに行って良かったです。行った甲斐がありました。



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  1. 2015/04/19(日) 23:45:52|
  2. リペアー
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プロフィール

奥村健治

Author:奥村健治
アメリカでギター製作を学び、現在イギリス・ロンドンにてアコースティックギター製作に励んでおります。長崎県佐世保市出身

Santa Cruz Guitar Company, Bourgeois Guitars, Lowden Guitars の英国でのリペアーマンもやっています。

www.okumuraguitars.com
www.okumuraguitars.tumblr.com
https://twitter.com/okumuraguitars
https://instagram.com/okumuraguitars/

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