奥村健治アコースティックギター製作 IN ロンドン

ロンドン在住の個人製作家によるギター製作ブログ

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Martin HD-28 のネック角がちょっと・・・

先日あるお客さんから連絡があり、最近買った Martin HD-28 が酷くビビるので、出来れば直ぐに直してくれないかということでした。私も製作と修理で忙しいけど、簡単に直せる場合もあるので、とにかく工房まで持って来てくれと伝えました。

弦がビビると言っても、いろんな原因が考えられるので、どこが原因なのか色々と想像しながら(笑)、お客さんの到着を待ちました。

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この HD-28 は比較的新しいギターで、購入してから全く手を加えていないということでした。ギターを弾いてみるとかなり酷いビビりでした。1フレットから5フレット辺りは、殆どの弦がビビります。ネックをチェックしてみると、ネックリリーフ(順反り)が全くありません。弦を張った状態でも若干逆反りになっているようでした。

ネックというのは、弦を張った状態で、真っ直ぐでも逆反りでもいけません。若干順反りした状態がベストなのです。ネックが逆反りだと弦は勿論ビビりますが、真っ直ぐでもビビります。弦には振動幅があるので、振動する弦がフレットに触れないように、ネックは若干順反りしていた方が良いのです。

下の写真は弦を緩めた状態です。ヘッドからブリッジに向かってネックの真っ直ぐさをチェックすると、ご覧のように完全に逆反りになっています。私の理想としては、弦を張っていない時はネックが真っ直ぐで、弦を張った時にちょうど良い順反りになることなのですが、ネックの曲がりには個体差があり、弦を張っていない時に若干逆反りの状態にし、弦を張ってちょうど良い順反りになる場合もあります。しかし、このギターの逆反りは大き過ぎます。

取り敢えず、トラスロッドを緩めてネックを真っ直ぐにすることにしました。

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Martin 社では、1985年から one-way のアジャスタブル・トラスロッドが採用され、2006年からは、two-way のトラスロッドが採用されました。サウンドホールの中から六角レンチを入れて調整するようになっています。下の写真のブレイスの穴から六角レンチを入れます。

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トラスロッドの端のナットは穴の近くにあるのではなく、奥のネックヒール部分にあります。つまり、穴からトラスロッドのナットまではかなりの距離があり、最低 4.5 インチの長さがある六角レンチが必要になります。下の写真でも分かるように、穴からネックブロックの間に別のブロックがあり、トラスロッドのナットに六角レンチを届かせるには、絶対に長いレンチが必要なのです。

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下の写真の六角レンチを使ってトラスロッドを調整します。太さは5ミリで、十分な長さがあります。これだけの長さがないと、Martin のトラスロッドは調整が出来ません。

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トラスロッドはもうこれ以上回らないぐらい強く締めてありました。お客さんの話では、購入してから何も手を加えていないということでしたが、購入する時、弦高が高かったので、ギターショップのスタッフがトラスロッドを締めて逆反りにし、弦高を低くしたようです。これについては以前にも書いていますが、弦高を低くする イコール トラスロッドを締めるではないのです。トラスロッドを締めるには、それなりの理由が必要です。今までリペアーしたギターにはよくあることなのですが、弦高を低くするためにトラスロッドをきつく締めてあるものがあります。購入時にギターショップ側がトラスロッドを締めて弦高を低くしているものがよくあるのです。あるいは、リペアーショップで締められている場合もあります。ちょっと呆れてしまう話です。弦高が高い原因には、ネックの順反り、ネックの元起き、サドルが高いなど、いろんな原因があります。その原因が分からない限り、すぐにトラスロッドを回してはいけません。

ところでトラスロッドを完全に緩めると、ネックは順反り状態でした。下の写真でも分かるように、指板上にストレートエッジを乗せると、フレットとの間に隙間が出来ています。これが新しいギターだとは…。トラスロッドを回してネックを真っ直ぐにしました。弦を張ってからの微調整も必要な時もありますが、このギターの場合、弦を張ってからのネックリリーフはちょうど良い数値でした。

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下の写真のサドルの高さは調整前です。弦高を低くしなければならないので、サドルはこれよりも低くなります。かなり低くなりますね。

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ちょうど良い弦高にすると、サドルの高さは下の写真のようになりました。ちょっと低くて、理想の高さではありません。

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下の写真はサドルを横から撮ったものですが、サドルが低いため、弦のブレイク・アングル(弦のサドル上の角度)があまりありません。理想は、弦がサドルに乗る角度がもっとあるべきです。角度がもっとあると、ボリュームも増し、ボディーの鳴りももっと良くなるはずです。

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弦高はちょうど良くなり、弦のビビりも無くなったのですが、サドルは低く、本来ならばネックリセットが必要だと思います。ネックリセットとは、ネックをボディーから取り外し、ネック角を増してから再接着することです。こうすることにより、サドルが高くなり、音ももっと良くなります。お客さんにはネックリセットのことを提案しましたが、リペアー代はかなり掛かるし、取り敢えず弦のビビリは無くなり、弦高も良くなったので、今回はこのままでよいということになりました。

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私見ですが、トラディショナル・スタイルのギターを購入するのであれば、Santa Cruz Guitar CompanyBourgeois GuitarsCollings Guitars が絶対にお勧めです。この3社のギターはよく取り扱いますが、ネック角には殆ど問題がないし、作りはしっかりしています。まあ個人の好みにはなると思うのですが…。



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  1. 2015/08/29(土) 22:35:09|
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プロフィール

奥村健治

Author:奥村健治
アメリカでギター製作を学び、現在イギリス・ロンドンにてアコースティックギター製作に励んでおります。長崎県佐世保市出身

Santa Cruz Guitar Company, Bourgeois Guitars, Lowden Guitars の英国でのリペアーマンもやっています。

www.okumuraguitars.com
www.okumuraguitars.tumblr.com
https://twitter.com/okumuraguitars
https://instagram.com/okumuraguitars/

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