またまたビビりの話です。これで続けて4回目。今回のビビりっていうのは、トラスロッドの振動の話です。
去年の9月、サンタクルーズ、OM-PW を購入したばかりというお客さんが、トラスロッドがネック内で振動するということで、ギターをギターショップに持ち込まれました。その時の話は去年の記事「
諸悪の根源はどこだ?!奴を探し出せ!!」に書いています。


当時、購入したばかりの新品のギターで、買って間もなく、ネック内のトラスロッドが振動するようになりました。特定の音を弾くとトラスロッドが振動し、ネックの後ろを叩くと、鈍い音がしていました。明らかにトラスロッドがネック内で固定されていない音です。

前回はネックの反りが変化しない程度にトラスロッドを回すことで問題は解決しました。トラスロッドが固定され、ネック内での振動は無くなりました。
さて、あれから一年近く経ったわけですが、やはり当時行ったリペアーは応急処置にしかすぎず、トラスロッドが再びネックの中で振動し始めました。症状は前回と殆ど同じです。
実は前回のリペアーの後、ある方からアメリカで行っているトラスロッドのネック内での振動に対する対処法のアドバイスを頂戴しました。もちろん、私はそれまでその対処法を知らなかったのですが、調べてみると、その対処法をインターネットで見ることが出来ました。次回こういうトラブルがあった場合は、その方法でリペアーを行おうと思っていたのですが、やっとその日がやって来ました。
その方法を簡単に説明すると、ネック内のトラスロッドの溝の隙間に接着剤を流し込むということです。使用する接着剤ですが、私は瞬間接着剤を使用することにしました。インターネットで説明してあった接着剤とは違いますが、瞬間接着剤は隙間に浸透しやすいので、自分の判断でこれを使用することにしました(もしかしたら正しくないのかもしれませんが…)。
7フレットを抜き、フレット溝の真ん中にドリルで穴を開けます。

ドリルでフレット溝に穴を開けます。深さはトラスロッドに届くまでなのですが、サンタクルーズのギターの場合は、トラスロッドがネックジョイントに向かって徐々に深く入っているので、7フレット辺りでは、深さはちょうどネックの厚さの半分ぐらいかなと判断しました。


ちょうどネックの厚さ半分ぐらいでトラスロッドに到達するのですが、ちょうどど真ん中だと(つまりトラスロッドの真上)、接着剤が溝の中に浸透していくのかどうか確かではなかったので、真ん中からちょっとずらしてもう一つ穴を開けました。ちょうどトラスロッドの横に穴が開くようにします。穴を開けると、ドリルがトラスロッドの横に若干触れる感触がありました。これでトラスロッドの溝に到達したと思うのですが…。

瞬間接着剤のノズルの先に細いノズルを取り付け、溝の一番深いところに接着剤を流し込みます。

しばらく乾燥させ、まずネックの後ろを叩いてみます。
「音がソリッドだ!」
ネックの後ろを叩いた音に鈍さは無く、しっかりとしたソリッドな音です。トラスロッドはネック内で固定されたようです。でもまだ安心出来ません。弦を鳴らして振動音が無いかどうかチェックしないといけません。ネックの後ろを叩いても振動音はしないので、おそらく直っていると思うのですが…。

まだ7フレットを元に戻さず、弦を張って音をチェックしてみます。もしかしたらまだ接着剤を流し込む必要があるかもしれないと思ったからです。7フレットには仮のフレットを差し込んでいます。

弦を張って弾いても全く問題はありません。トラスロッドの振動音は全く聞こえません。
「良かった〜。」
これで安心して7フレットを元に戻せます。

7フレットを打ち直した後はフレットの端を接着し、やはりフレットの高さに若干の違いが生じるので、高さを調整して形状を整えます。


ネックリリーフ、弦高に関しては、去年の調整から変化はありませんでした。後ほどお客さんから感謝のメールが届きました。
何かシリーズ化したようにビビりの話が4回も続いてしまいました(笑)。製作においても、修理においても、ビビりが無いようにすることは重要なことです。火の無いところには煙は立たないというように、ビビりには絶対に原因があります。それを見つけ出すのが重要なのです。
最後にアドバイスを頂戴したO 氏に感謝致します。
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- 2014/08/31(日) 11:04:47|
- リペアー
-
| トラックバック:0
-
| コメント:6
いつもブログを楽しく拝見させていただいています。
ロッドの音はいつも気になる部分ですね。
Super Glueによる修理は私も聞いたことがあります。
とりあえず異音が収まって一安心というところだと思いますが、衝撃力に弱い接着剤なのでまたネックが動いたり、ロッドを調整すると同じような補修をする必要が出てくるかもしれません。
ロッドが動かなくならないよう慎重に行うということが前提ですが、ボート用などのグラスファイバー積層に使うタイプの非常に粘度の低いエポキシを少量使うほうが経年変化にも対応できるかもしれません。ご参考まで。
- 2014/09/01(月) 03:22:40 |
- URL |
- Ken #-
- [ 編集 ]
建さん、アドバイスありがとうございます!本当に助かります。
粘度の低いエポキシとは良いアイデアですね。次回からの参考にさせて頂きます。建さんが仰るとおり、瞬間接着剤だとロッドを回して動かした時に剥がれる可能性はありますね。実はGryphoneのフランク・フォードさんのサイトでも接着剤は瞬間接着剤ではなかったのですが、今回のこの仕事はその日に終えなければならなかったので、すぐに出来る瞬間接着剤にしました。これからこのギターがどうなるのか様子を見ていこうと思います。
- 2014/09/01(月) 11:32:24 |
- URL |
- 奥村健治 #-
- [ 編集 ]
初めて書き込みさせて頂きます、かわせと申します
いつも興味深く拝見させて頂いております。というのも私趣味でギターを製作しておりまして、プロというのはこうやって仕事をするんだと、いつも感心しております。
まだまだ二本が完成しただけなので、とくに詰めの甘い性格のため出来は、、、
特に最終調整はちょっと欲を出すとびびりが出たりして、何本ナット、サドルを作り変えたことか(笑)
ただアマチュアが良くつまづく塗装に関しては本職が車の塗装をやっていますので他のアマチュアの方よりは環境が良い分何とかなっていますが、ラッカーや木目の目止めなんかは経験が無いので試行錯誤です。
それでは投稿楽しみにしています。
- 2014/09/05(金) 08:58:11 |
- URL |
- かわせ #WCSj23LI
- [ 編集 ]
かわせさん、初めまして。コメントありがとうございます。
実はかわせさんのFacebookのページを拝見したことがあります。以前、私のFacebookのビジネスページで「いいね」をされましたよね。車の塗装をやっているということで思い出しました。本職として車の塗装をやっていらっしゃるというのは羨ましい限りです。塗装は難しい作業で、今でも試行錯誤しながらやっています。私も最近までは車の塗装ブースを借りて塗装をやっていましたが、工房がある建物内で家具職人の方がいらっしゃって、その方が工房内に塗装ブースを完備していらっしゃるので、今度からそれを使わせてもらうことになりました。本当は自分の工房に塗装ブースが欲しいのですが、狭い上に窓が無く、換気の設備が出来ません。塗装ブースを完備されている方は本当に羨ましいです。塗装の技術はかわせさんの方が私よりも数段上だと思います。
ブログではいろいろと書いていますが、少しでもお役に立てれば幸いです。
それでは今後とも宜しくお願い致します。
- 2014/09/06(土) 17:57:19 |
- URL |
- 奥村健治 #-
- [ 編集 ]
返信いただけるかわかりませんが、書き込ませていただきます。
2013年製のj-45なのですがリペアに何度出してもビビりが無くなりません。
G#mを弾くと弦がフレットにぶつかっているような音がします。
ネック調整・フレット擦り合わせをしても変わらず、以前弦高をものすごく高くしても直りませんでした。(今は2.5mmくらいです。)
ブログを拝見したところトラスロッドやジャックの向きなどビビりには原因が色々あるそうで、このようなビビりの原因には何があるのか教えていただきたく思いコメントした次第です。
よろしくお願い致します。
- 2016/07/06(水) 15:52:12 |
- URL |
- rei #-
- [ 編集 ]
rei さん
返信がかなり遅れて申し訳ございません。最近ブログのサボり癖がついてしまい、記事もあまり投稿していない現状です。
問い合わせのビビりの件ですが、ブログにも書いているように、ビビりには様々な原因があります。たとえフレット擦り合わせをしたとしても、弦を張った時のネックの元起きでネックジョイントより下のハイポジションのフレットが高くなってしまい、それが弦のビビりの原因だったりします。ビビりが弦とフレットの接触でなければ、もちろん他の箇所で何かが振動しているということになります。もしよろしければ、私に直接メールを送っていただけますか?メールアドレスは下記のとおりです。
okumuraguitars@gmail.com
直接ギターをチェック出来れば一番良いのですが、メールでなるべく解決出来るようにしたいと思います。
- 2016/10/04(火) 00:03:24 |
- URL |
- 奥村健治 #-
- [ 編集 ]