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奥村健治アコースティックギター製作 IN ロンドン

ロンドン在住の個人製作家によるギター製作ブログ

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フラメンコギターの弦高ゲット大作戦

フラメンコギターの弦高の話です。

スペインの某メーカーのフラメンコギターが工房に持ち込まれました。依頼の内容は、弦高を低くして欲しいという事でした。しかし、弦高を下げる余裕はほんの僅かしかなく、ギターの持ち主が望む、いわゆるスタンダードなフラメンコギターの弦高には程遠い状態です。それをどうするかというのが今日の話です。

一応最初に断っておきますが、私はスティール弦のアコースティックギターが専門で、フラメンコギターやクラシックギターは専門ではないため、その専門の方々からすると、「えっ?!」と驚いてしまうことをするかもしれませんが、その点はどうかご了承下さい。アコギは、スティール弦とナイロン弦(フラメンコギターやクラシックギター)ではネックジョイントの構造が違うため、その修理法にいろいろと違いがあると思います。私はあくまでも、自分の持っている知識と直感を頼りに今回の修理を行いました。

3070.jpg

まず最初に弦高を測りました。12フレット上で、1弦が 8.8/64 インチ(約 3.5 ミリ)、6弦が 10/64 インチ(約 4 ミリ)です。私がクラシックギターの弦高を調整する場合、1弦を 8/64 インチ(約 3.2 ミリ)、6弦を 10/64 インチに調整します。このフラメンコギターの場合、クラシックギターと同じ弦高にするのであれば、1弦を 0.8/64 インチ(約 0.3 ミリ)低くすれば良い訳です。12フレット上の弦高を 0.8/64 インチ(約 0.3 ミリ)低くするには、サドルをその2倍の 1.6/64 インチ(約 0.6 ミリ)低くしなければなりません。下の写真でも分かるように、サドルの高さの余裕はあまりありません。特に1弦側を削ると、サドルの高さが無くなってしまいます。

3071.jpg

ギターの持ち主の話によると、フラメンコギターの弦高はクラシックギターよりも低いそうです。私はフラメンコギターのスタンダードな弦高を知りませんでした。ギターの持ち主はその場で、あるウェブサイトを見せてくれました。そこにはフラメンコギターの弦高の数値が示されており、1弦で 2.5 ミリ、6弦で 3 ミリと書いてあります。私がいつも使用しているインチで言えば、6.3/64 インチと 7.5/64 インチになりますね。ちょうどスティール弦アコギとクラシックギターの間ぐらいの数値ですね。

さて、ここでギターの持ち主からメートル法での数値が提示されましたので、ここから弦高の高さはミリだけでお話しします。昔から私のブログを読んでいらっしゃる方はご存知だと思いますが、私はアメリカでギター製作を始め、依頼のずっと海外で活動しているため、ギターの製作においてはインチを使用しています。最初からインチを使っているので、そっちの方が楽なんですよ。日本の方々にしてみれば不思議でしょうね(笑)。

修理前の弦高が1弦で 3.5 ミリ、6弦で 4 ミリ、持ち主が希望する弦高が1弦で 2.5 ミリ、6弦で 3 ミリ、1弦側も6弦側も弦高を 1 ミリ低くしたいという事は、サドルをその2倍の 2 ミリ低くする必要があります。上の写真を見てもらえれば分かるように、サドルにはその余裕はありません。どうしてもサドルを削るとすれば、ブリッジの木の部分を削ってブリッジ全体を低くするしかありません。しかし、このギターのブリッジには塗装が施されており、ニトロセルロース・ラッカーであれば、古い塗装と新しい塗装のブレンドが可能ですが、このギターの塗装はポリウレタンと思われます。塗装の問題は別として、サドル周辺の木の部分を低くしてしまうと、穴から通された弦がサドルの上に乗る角度が無くなってしまい、音は悪くなるし、弦のビビりの原因にもなってしまいます。だから私としてはお薦めの処置方ではありません。

さあ、どうしましょう?このままギターの持ち主には、弦高を低くする事は無理だと諦めてもらうか?

いえいえ、そういう訳にはいきません。修理する方法は必ずあるはずです。弦を外した時のネックリリーフは .008 インチ(下の写真は .006 インチのスペイサーを使っていますが、.008 インチが本当の数値です)あります。.008 インチは約 0.2 ミリです。まず、ネックを真っ直ぐにしてネックリリーフ(順反り)の数値を0 にすれば、サドルの高さを少し稼げると考えました。

3072.jpg

フラメンコギターやクラシックギターにはネック調整のトラスロッドが入っていないため、ネックを熱処理加工で曲げる事にしました。この熱処理加工では一発で思い通りにはなかなかなりません。曲がりが足りなかったり、時には曲がり過ぎる時もあります。今回の場合も、3回の熱処理加工が必要でした。ネックが真っ直ぐなったところで、サドルの高さをチェックしましたが、ほんの僅か高くなっただけで、まだまだ高さがたりません。

3073.jpg

ここで問題発生です。指板に熱が加わった事により、指板が若干収縮したようです。指板横のフレットが若干飛び出していました。この修復も行わなければならないし、とにかく修理方法を見つけ出さなければなりません。

そこである方法を思い付きました!

元々フレットの高さの不揃いがあったので、フレットの擦り合わせは行うつもりでした。フレットの横も少し飛び出してしまったので、フレットを全部抜き取り、フレットの打ち替えをする事にしたのです。フレットの打ち替えをする場合、土台となる指板を平らに削る必要があります。その指板を削る時、ナット側を多めに削り、ネック角を大きくする事にしたのです。この方法だとサドルを高くする事が出来ます。スティール弦のギターだと、ボディーからネックを外す事が可能なため、ネック角調整が出来ます。フラメンコギターなどのナイロン弦ギターの場合は、ボディーからネックが外せません。指板のナット側を多く削ってネック角を大きくする事でそれを解決させようという事です。

ナイロン弦ギターを製作されている方々にすれば、この方法は邪道かもしれませんが、この方法が一番だと考えました。ナット側の指板を多く削り、ネックジョイント部分の12フレットまでを真っ直ぐに削ります。そしてネックジョイント部分から最終フレットに掛けては、fallaway といって、指板の高さを徐々に低くしていきます。通常ナイロン弦ギターには fallaway が施されていないのかもしれませんが、フラメンコギターの弦高はクラシックギターよりも低いし、弦を激しくかき鳴らす奏法もあるので、弦がビビる可能性を出来るだけ軽減するため、この fallaway を施すことにしました。

3074.jpg

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  1. 2015/06/11(木) 07:24:51|
  2. リペアー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
<<お詫び | ホーム | やっと直った12弦のビビり>>

コメント

なるほど!
自分も以前同じ状況になり仕方なく思いっきりブリッジを削ってしまいました。
良い訳ないですよね。今は反省しています(笑)
指板をナット側に落としで削る。これでネック角を付けたのと同じ効果が得られる訳ですね。
ということはナットもいくらか低くセッティングしたのでしょうか?
  1. 2015/06/05(金) 14:06:46 |
  2. URL |
  3. travispitz #-
  4. [ 編集 ]

フラメンコはクラギと似て非なるモノなり

こんにちは♪ 奥村マジックに毎回魅了されてます。 素晴らしいわ!!
アリゾナ時代、実は日本のフラメンコギタリストM氏と一緒のクラスでした。彼は爪が削れるから嫌だと
ギターを殆ど作らず、学校では毎日愛用のスペインH師作のフラメンコギターを弾いて過ごしてました。
アリゾナの乾いた気候にフラメンコの音が実に合うんですよ。彼のギターの殆どを先生のボブが
仕上げたという逸話が残っております^^!) 確かにフラメンコギターの弦高は低いですね。
彼は、弦高を下げて3弦がビビらないのが良いフラメンコギターだ。そしてボデイは必ず叩き割って
しまうので消耗品だと語ってました。
  1. 2015/06/05(金) 15:40:57 |
  2. URL |
  3. アリゾナ #kpjYxc8I
  4. [ 編集 ]

このflamencoギターは・・・

スペインの製作家や工場がよくやるクラシックギターとflamencoギターと同じ型で作り、ネックの差し込み角のみ変える。

写真からはそのように見えましたがどうでしょう?

近年はボルトオンのflamencoギターが登場しフレンチ系ヒターノがよく使用していますが、なかなか便利で良いらしいです。

ダブルトップのflamencoギターも登場しましたし、源流に戻れと、近年ウードでflamencoを弾く奏者も。

flamencoも幅広くなり、固定観念から抜け新しい時代にはいりましたね。
  1. 2015/06/08(月) 06:55:06 |
  2. URL |
  3. 輝 #YMuN7fn.
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

travispitzさん、まずコメントの返信がかなり遅れたことを深くお詫び申し上げます。

ギターの持ち主の方がどうしても弦高を低くしたいということで、試行錯誤の上、このアイデアが思い浮かびました。実際にやってみると、効果は抜群でした。もちろん、ナット溝は高くなるので、深く削り直しました。
  1. 2015/07/16(木) 19:14:03 |
  2. URL |
  3. 奥村健治 #-
  4. [ 編集 ]

Re: フラメンコはクラギと似て非なるモノなり

アリゾナさん、まずコメントの返信がかなり遅れたことを深くお詫び申し上げます。

マジックだなんて、でもそう言って頂いて嬉しいです。フラメンコギターに関しては、まだまだ未熟なところがあって、毎回勉強になっています。ところで、アリゾナさんのロバートベンでの体験をいろいろと聞けて面白いです。
  1. 2015/07/16(木) 19:20:29 |
  2. URL |
  3. 奥村健治 #-
  4. [ 編集 ]

Re: このflamencoギターは・・・

輝さん、まずコメントの返信がかなり遅れてしまい、深くお詫び申し上げます。

クラシックギターやフラメンコギターは専門ではないので、まだまだ分からないことが多々あるのですが、輝さんからもいろいろと情報を頂き、大変感謝しています。スティール弦のアコギと違い、ネック角が簡単に変えられないのが厄介ですが、ボルトオンだったらかなり簡単になりますね。もし私がクラシックギターやフラメンコギターを作るとしたら、スティール弦アコギのジョイントにするかも知れません。

> スペインの製作家や工場がよくやるクラシックギターとflamencoギターと同じ型で作り、ネックの差し込み角のみ変える。
>
> 写真からはそのように見えましたがどうでしょう?
>
> 近年はボルトオンのflamencoギターが登場しフレンチ系ヒターノがよく使用していますが、なかなか便利で良いらしいです。
>
> ダブルトップのflamencoギターも登場しましたし、源流に戻れと、近年ウードでflamencoを弾く奏者も。
>
> flamencoも幅広くなり、固定観念から抜け新しい時代にはいりましたね。
  1. 2015/07/16(木) 19:28:42 |
  2. URL |
  3. 奥村健治 #-
  4. [ 編集 ]

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奥村健治

Author:奥村健治
アメリカでギター製作を学び、現在イギリス・ロンドンにてアコースティックギター製作に励んでおります。長崎県佐世保市出身

Santa Cruz Guitar Company, Bourgeois Guitars, Lowden Guitars の英国でのリペアーマンもやっています。

www.okumuraguitars.com
www.okumuraguitars.tumblr.com
https://twitter.com/okumuraguitars
https://instagram.com/okumuraguitars/

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