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奥村健治アコースティックギター製作 IN ロンドン

ロンドン在住の個人製作家によるギター製作ブログ

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約40年ぶりに再会した Guild F-50R

前回の記事で年末年始に日本へ帰省し、大晦日に友人の Martin 00028-EC のチェックをしたことを書きましたが、年が明けた1月2日、別のギターをチェックしました。そのギターはなんと約40年ぶりの再会だったのです。

そのギターというのは、Guild F-50R です。そのギターの持ち主とは去年、あるきっかけで久しぶりに電話で話すことになりました。最後に会ったのはいつだったか思い出せないくらい久しぶりの再会(電話ですが)でした。電話でまだ Guild F-50R を持っているか尋ねると、まだ持っているというのです。ただ弦高がかなり高くなって弾ける状態ではないので、知り合いの居酒屋の壁に飾ってあるということでした。それで私が日本に帰省する時に、そのギターをチェックするということになりました。

ではその Guild F-50R のお話です。

約40年前、私が16才の時です。私は友達数人といつもハンバーガー店、「ヒカリ」(現在では佐世保バーガーの超人気老舗となっています)の前で遊んでいました。「ヒカリ」の前には米海軍基地やその住宅地があり、裏手には米海軍将校クラブがありました。当時アメリカに憧れていた私達は、アメリカの雰囲気が味わえる「ヒカリ」の前でいつも遊んでいたのです。「ヒカリ」の2階には「喫茶ヒカリ」(経営者は同じ。現在はハンバーガーのログキットになっている)があり、ここでは時々弾き語りが行われていました。アコースティックギターが大好きだった私はそこにも足を運ぶようになり、ある日、20才ぐらいのお兄さんがアコースティックギターを弾きながら、オリジナルの曲を演奏していました。そのお兄さんが弾いていたギターが Guild F-50R だったのです。

当時 Martin、Gibson、Guild といえば高嶺の花であり、16才の私にとっては絶対に手の届かない代物でした。当時 John Denver の「Sunshine On My Shoulders」がジーンズメーカー「Big John」のコマーシャルで使われ、John Denver は大人気でした。その John Denver がメインに使っていたギターが Guild だったのです。そして当時大好きだった Simon & Garfunkel の Paul Simon も Guild F-212 (12弦ギター)を弾いていました。その Guild が目の前にある。初めて実物を見る私は興奮していました。今でも鮮明に覚えています。まだ新品らしく、ボディーがキラキラと輝いていました。

お兄さんの演奏が終わった後、私はお兄さんと話をし、その Guild を弾かせてもらえることになりました。と言うよりも、触らせてもらえるというのが正解でしょう。その時、彼が言った言葉を今でも鮮明に覚えています。

「ピックガードには傷を付けないでね。」

よく見ると、まだピカピカの新品でした。初めて触る高級ギターの感触は最高でしたが、同時にかなり緊張しました。

それからそのお兄さんとは知り合いになったのですが、もう何十年も会っていませんでした。

そして去年、あるきっかけで電話で話すことになり、私が年末年始に日本へ帰省するので、その Guild F-50R のトラブルをチェックすることになったのです。生まれて初めて弾いた(触ったの方が正しい)高級ギターを約40年後、ギター製作者・リペアーマンになった自分が診る、こんなに嬉しいことはありません。私を興奮させたギターが今どうなっているのか、ワクワクしながら帰国しました。

年が明けた1月2日、そのお兄さんと私は、Guild F-50R が飾ってある居酒屋に行きました。40年ぶりのギターに感動しました。40年前のピカピカの新品とは打って変わって、今では貫禄のあるビンテージです。聞くところによると、当時、40万円で新品として購入したそうです。今ではトップは焼けて色が濃くなり、塗装はビンテージ特有の小さいクラックが入っており、40年という長い歴史を感じました。

そしてトラブルのチェックを始めました。

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下の写真をご覧下さい。

弦高がかなり高いので、ヘッド方向からネックを覗き込んでネック角をチェックしました。ネックは手前のナットからネックジョイントまでは真っ直ぐで、その先は上に伸びています。最悪の状態です。理想のネックの真っ直ぐさとネック角は、ナットからネックジョイント辺りまでが真っ直ぐ(但し、若干の順反り、つまりネックリリーフが必要)で、そこから先は若干下がっていることです。そしてナットからネックジョイントを結ぶ直線ラインの延長がブリッジの上に当たることです(但し、指板のアールとブリッジ上部のアールが同じ場合。同じでないメーカーも多々ある。)。このギターはネックが元起きして前方に倒れているため、ナットからネックジョイントまでの直接の延長線は、ブリッジの底より下に当たっています。これではもう弦高を低くすることは出来ません。ネックをボディーから取り外し、ネック角を矯正するネックリセットが必要となります。

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サドルは下の写真のとおりです。ネックリセット後はもっと高いサドルに交換した方が良いでしょう。材質はプラスティックみたいなものなので、牛骨に交換したいですね。

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下の写真でも分かるように、弦高はかなり高いです。ネックジョイント部分をよく見てみると、大きなトラブルを発見しました!指板の両脇の表板が割れ、サウンドホール方向にずれています。つまりボディー内部のネックブロックとネックがボディーに食い込んでいるのです。ボディーのバインディングとパーフリングをよく見て下さい。ネックジョイント部分で内側にカーブを描いているのが分かると思います。これは私が以前リペアーした Guild F-50BLD の症状と同じです。このリペアーのことは、過去の記事、「ネックブロックの破損」に書いています。どうかご参照下さい。

3389.jpg

この Guild F-50R のトラブルは、私がリペアーを行った Guild F-50BLD ほど酷くはありませんが、弦をずっと張ったまま状態にしていると、いずれ同じようになるでしょう。程度の違いはありますが、指板の両脇の表板が割れ、ネックブロックとネックがボディー内に食い込んでいるのは同じです。

下の写真を見て分かるでしょうか?指板の脇の表板が割れ、ボディー内のネックブロックとネックがサウンドホール方向に食い込んでいるため、ボディーのバインディングとパーフリングが内側に曲がっています。割れてずれた表板とパーフリングの間に隙間が出来ているのも確認出来ると思います。

3390.jpg

下の写真でも割れた表板がサウンドホール方向にずれているのが分かると思います。ロゼットのパーフリングも割れたり、隙間が出来たりしていますね。

3391.jpg

このリペアーは大掛かりな作業になりますが、もちろん修復可能です。以前行った Guild F-50BLD と同じ作業になります。なぜこんな状態になってしまったかという原因は、Guild F-50BLD の修復の記事を読めば分かります。あくまでも想像ですが、おそらく、ネックブロックと表板が密着して接着されていなかったからだと想像しています。Guild F-50BLD の時がそうでした。ネックブロック表板はお互いに触れ合っておらず、間にある僅かな布テープで繋がっている状態でした。これでは約70キロの弦の張力には負けてしまいます。弦の張力によりネックブロックとネックがボディーに食い込んでしまったのです。

このリペアーを行うには、まずネックを取り外し、その後ボディーの表板のバインディングとパーフリングを取り外して表板をボディーから剥がします。そしてネックブロックを元の位置に戻さないといけません。大掛かりな作業です。ギターの持ち主のお兄さんには、必ず私が修復すると伝えました。私の工房はロンドンにあるので、そう簡単にはギターを移動出来ませんが、私にとっては思い出のある貴重なギターなので、いつになるかは分かりませんが、必ず修復したいと思っています。それまではこの居酒屋の壁に飾られているのでしょう。

この居酒屋から帰る時、居酒屋のご主人が私のところに真っ白な色紙を持って来ました。私にサインをしてくれと仰るのです。店内には来店したことのある有名人の色紙が何枚か壁に飾ってあったのですが、私もサインを求められてしまいました。私は有名人ではないし、最初は躊躇したのですが、どうしてもと仰るので、サインすることにしました。ただ今まで色紙にサインなんてしたことがないので、どう書いていいか全く分かりません。有名人はかっこいいサインをされますが、私にはサインがないので、緊張しながら自分の名前を漢字でサッと書きました。それが下の写真なのですが、本当に下手くそな字ですよね(笑)。左側のギターのマークは私が描いたのですが、右側のギターのイラストは後から誰かが描いたものです。サウンドホールの位置が面白いですね(笑)。私の色紙が店内に飾られているなんて、ちょっと恥ずかしいです。

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ということで、このギターは必ず自分が修復したいと思っています。同じ症状の修復を過去に行っているのですが、そのことを16回のシリーズでブログの記事にしています。下に16回全部のリンクを載せましたので、興味のある方は覗いてみて下さい。

ネックブロックの破損

ネックブロックの破損 その2

ネックブロックの破損 その3

ネックブロックの破損 その4

ネックブロックの破損 その5

ネックブロックの破損 その6

ネックブロックの破損 その7

ネックブロックの破損 その8

ネックブロックの破損 その9

ネックブロックの破損 その10

ネックブロックの破損 その11

ネックブロックの破損 その12

ネックブロックの破損 その13

ネックブロックの破損 その14

ネックブロックの破損 その15

ネックブロックの破損 その16 最終回



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  1. 2016/03/22(火) 02:50:12|
  2. リペアー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
<<ブリッジの割れは何故起きた? その1 | ホーム | 日本でチェックした友人の Martin 000-28 EC>>

コメント

リペアの様には・・・

ううむ・・・師匠でもサインはリペアの様に上手くいきませんね^^
ひょっとしてギルドはスライドネック方式でピッチを合わせるのかも?
なんて冗談も通用しませんよね。当時の40万は今でも大金ですから。
私はつい最近Gibson-LPジュニアのネック折れ4回も修理されたギターを
ヤフオクで買いました。ギター好きな素人美容師の方が直されたものですが
今回はFRPで埋めて綺麗に修理されてました。実は以前にもネック折れLP
を買ってリペア技術の上手さを知っていたからです。好きこそ物の上手なれ、
とはよく言ったものですね。信頼できるリペアマン・ルシアーは頼もしいです^^
  1. 2016/03/26(土) 03:58:50 |
  2. URL |
  3. サルタンスイング #DL0dExLA
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

奥村健治

Author:奥村健治
アメリカでギター製作を学び、現在イギリス・ロンドンにてアコースティックギター製作に励んでおります。長崎県佐世保市出身

Santa Cruz Guitar Company, Bourgeois Guitars, Lowden Guitars の英国でのリペアーマンもやっています。

www.okumuraguitars.com
www.okumuraguitars.tumblr.com
https://twitter.com/okumuraguitars
https://instagram.com/okumuraguitars/

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