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奥村健治アコースティックギター製作 IN ロンドン

ロンドン在住の個人製作家によるギター製作ブログ

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ブリッジの割れは何故起きた? その1

私が週一回リペアーを行っているギターショップ、Ivor Mairants にあるイギリスの個人製作家のギターが持ち込まれました。ギターのトラブルはブリッジの割れです。

3393.jpg

ご覧のように、サドルが前方へ倒れ、ブリッジに亀裂が入っています。木にも個体差がありますから、亀裂が入った部分が元々弱い部分だったということも考えられるかも知れませんが、弦の張力が強い12弦ギターならまだしも、6弦ギターのブリッジに亀裂が入るということは、何か他の原因が考えられます。それにこれは比較的新しいギターです。

3394.jpg

3395.jpg

弦を外してサドルを真っ直ぐに立てると、ご覧のように、サドル溝が割れによって広がっています。

3396.jpg

サドルを外してみると、サドル溝の底には亀裂が入っています。底にも亀裂が入り、サドル溝の幅が広がっているということは、ブリッジの底の前方が表板から剥がれているということです。

3397.jpg

このギターはこのギターショップで購入されており、ショップのマネージャーが製作家に連絡を取ることになりました。私としては、その製作家が修理するか、または新しいブリッジを製作するのかと思っていたのですが、彼の答えは私に委せるということでした。ちょっと意外だったのですが、やって欲しいと言われるのであればやります!

新しいブリッジを作るのが一番良い方法なのかも知れませんが、お客さんの意向や、週一回だけのリペアーということ、その他いろんなことを考慮し、現存するブリッジを修理することになりました。

まずはブリッジの底の接着剤をアイロンで柔軟にし、ナイフを差し込んでブリッジを剥がします。

3398.jpg

ブリッジが剥がれました。これで判明したことは、表板の接着面の塗装(このギターの場合はオイル)が完全に剥がされていないことです。このように塗装を完全に剥がさない有名メーカーも数多くあります。しかし、私としては、ブリッジの接着面の塗装は完全に剥がすべきだと考えています。今までリペアーしてきたブリッジの剥がれの多くは、塗装を剥がしていないことが原因でした(名前は言いませんが、有名メーカーでも多くあります)。

下の写真をよく見ると、ブリッジ前方の塗装(この場合はオイル)は剥がされていないことが分かります。

3399.jpg

そしてブリッジの裏側を見て驚きました!接着面全体に接着剤が塗られていないのです!下の写真を見ればそれがよく分かると思います。ブリッジ前方には接着剤が全くありません。

3400.jpg

サドルは弦の張力により、前方に倒れようとする力が作用します。ブリッジの底全体に接着剤が塗られていれば、ブリッジの前方が前に移動することはありません。このギターの場合は、ブリッジの前方、つまりサドル溝の前方に接着剤が全く塗られていなかったため、そこに亀裂が入ってしまったのです。下の写真でも分かるように、亀裂の前方には接着剤が塗られていません。これでは亀裂が入るのは当たり前です。

おまけにサドル自体にも問題がありました。サドルはサドル溝にピッタリとはまらなければなりません。サドルの厚さがサドル溝の幅よりも薄いと、サドルは前方に倒れ、ブリッジの前方には更なる力が加わることになります。このギターのサドルはサドル溝の幅よりも薄く、グラグラ状態でした。

3401.jpg

ブリッジの底の接着剤を剥がしました。これから亀裂の修復です。

3402.jpg

新しいブリッジは作らず、このブリッジをそのまま使います。きちんと修復すれば、もう割れることはありません。それでは次回はその修復の話です。

次回をお楽しみに。

つづく。



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  1. 2016/03/27(日) 02:16:54|
  2. リペアー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

いやはや

ブリッジのトラブル多いですね。塗装を剥がさない、接着剤をケチる、圧をかけないの
手抜きオンパレード・・・そりゃ〜割れます!飛びます!私ウクレレですらガチガチに
接着し直してます。だって音の要ですからね〜
  1. 2016/03/27(日) 04:01:41 |
  2. URL |
  3. サルタンスイング #DL0dExLA
  4. [ 編集 ]

悩ましい問題です。

こんにちは。また奥村さんのブログが頻繁に拝見できてうれしいです。

日本では現在、著名人の学歴詐称が取り沙汰されて大騒ぎしております。
社会は彼が公称してきた学歴に信頼を置いていて、結果として裏切られたわけですが、
私たちギター好きにとっても通じる、根の深い問題ですね。

ついぞ有名ブランドのギターなのだから良いギターに違いない、などと思い込みがちです。
奥村さんのブログを読むにつれ、それが必ずしも真実でないことがわかってきましたが、
それでも「個人製作家」と聞くと、むしろ強いブランド力を感じてしまいます。
何だか無条件に「こだわりを込めて、ていねいに作ってある」と信じ込んでしまうのです。
どうやら今回の記事を拝するに、それも危険な思い込みに過ぎないということでしょうか。

私は中国製の廉価なギターしか持っていませんが、いつか「生涯の1本」と言えるギターを
手に入れたいと思っています(今の手持ちにも愛着がありますが)。そして、その1本には
弾いていないときにも満足できるような「ステイタス性」や「安心感・信頼感」が欲しいと
思っています。

しかし、ビギナーゆえ、それを選ぶ基準が私の中でまだまだ曖昧なのです。
信頼できるモノを信頼できる相手から買いたいと願えども、それに値しないであろう
作り手(メーカーや製作家)も世の中にたくさんいて、しかもそれを前もって知るのは難しい。
これは長い旅になりそうなことです。ギター選びとは難しいものですね。

長々とすみません。続報も楽しみにしております。
  1. 2016/03/27(日) 05:13:53 |
  2. URL |
  3. #.Errmc3U
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

奥村健治

Author:奥村健治
アメリカでギター製作を学び、現在イギリス・ロンドンにてアコースティックギター製作に励んでおります。長崎県佐世保市出身

Santa Cruz Guitar Company, Bourgeois Guitars, Lowden Guitars の英国でのリペアーマンもやっています。

www.okumuraguitars.com
www.okumuraguitars.tumblr.com
https://twitter.com/okumuraguitars
https://instagram.com/okumuraguitars/

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