奥村健治アコースティックギター製作 IN ロンドン

ロンドン在住の個人製作家によるギター製作ブログ

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Simply Red のギタリスト、鈴木賢司氏の Gibson Southern Jumbo のリペアー その3 最終回

Simply Red のギタリスト、鈴木賢司氏の Gibson Southern Jumbo のリペアー その2」の続きです。今回が3回シリーズの最終回です。

前回の話では、フレットの擦り合わせが終わって弦を張るところまででした。張る弦はミディアムゲージ(.013-.056)です。やはり太い弦なので、ネックリリーフ(弦を張った時の若干の順反り)が少し大きく、トラスロッドを少し時計回りに回して調整します。

3551.jpg

ちょうど良いネックリリーフに調整し、サドルの高さも調整しました。さて、弦のビビりは解消されているでしょうか。全弦、そして全フレットをチェックしましたが、9フレットからネックジョイント手前で弦がビビる箇所が数箇所あります。弦を張る前から、もし弦がビビった時の原因は分かっていました。2つの原因が考えられます。

(1) ネックジョイント辺りからフレットの高さを低くしていく Fallaway がまだ高い。
(2) 指板のアールとサドルのアールが同じでない。つまり、指板のアールに対して、サドルのアールが少ない。

(1) の場合、フレットの擦り合わせでネックジョイント辺りからフレットの高さを徐々に下げて Fallaway を施しました。しかし、擦り合わせをする前は1フレットから最終フレットまでが同じで高さで、ある程度 Fallaway を施しましたが、フレットの高さをもっと低くするべきだったということです。ミディアムゲージの弦の張力は強く、弦を張るとネックの前倒れが大きく、Fallaway が殆どなくなってしまいます。それで9フレットからネックジョイント手前のフレットを弾くと、弦の振動が最終フレット辺りに触れて弦がビビってしまいます。

(2) の場合ですが、指板のアールとサドルのアールが同じではありません。指板のアールよりもサドルのアールが小さく、1弦と6弦で弦高の高さを決めるので、真ん中の3弦と4弦の弦高が通常よりも低くなり、弦の振動がフレットに触れてビビるのです。Fallaway が施されていなければ、弦がビビる可能性は更に大きくなります。

下の写真をご覧下さい。指板のアールは10インチです。これは半径10インチで描かれた円周の一部です。

3552.jpg

それに対して、サドルのアールは14インチで、10インチに比べると、アール度がかなり少なくなります。

3553.jpg

下の写真をご覧下さい。10インチと14インチのアールを比べてみました。上の黒いのが10インチで、下の白いのが14インチです。アール度にかなりの差があるのがお分かり頂けると思います。14インチのアールのサドルでは、3弦、4弦の弦高がかなり低くなってしまい、これが弦のビビりの原因になってしまいます。私は、指板のアールとサドルのアールは同じであるべきだと考えています。メーカーによっては同じでないものもありますが、サドルのアール度が少なくなってしまうと弦のビビりの原因になってしまいます。

3554.jpg

弦のビビりを解消するため、(1) と (2) のどちらを先に取り掛かるか考えました。

まず (2) の指板のアールとサドルのアールを同じにすることですが、このギターのサドルはちょっと特殊で、通常のものとは違います。下の写真でも分かるように、下の平らな部分の上に三角の盛り上がりがある形になっています。この三角部分を10インチアールにするには、両端をかなり削ることになります。そしてオリジナルのシェイプを保ったまま10インチアールに変更するのはかなり大変だし時間も掛かります。

3555.jpg

それで考えたのが、まず (1) の Fallaway を先にやることです。ネックジョイント辺りからのフレットの下がりをもっと低くすることにしました。それをまずやり、それでもまだ弦のビビりがあるようだったら (2) のサドルのアール変更を行います。

3556.jpg

ネックジョイント辺りからのフレットの高さを徐々に(更に)下げ(Fallaway)、フレットの擦り合わせをしました。弦を張って全弦、全フレットのビビりをチェックしましたが、全くビビりません。良かったです。(1) だけで弦のビビりは解消しました。3弦、4弦の弦高は通常より若干低いですが、Fallaway を施したことにより弦はビビりません。もし将来、弦のビビりが再び発生した場合は、この時はサドルのアールを変更するべきでしょう。

3557.jpg

サウンドホール周りの欠損部分の修復も終了しました。長い間乾燥させていた繋ぎ目部分のラッカーをまずスクレイプ(削り)し、それからウェットサンディング、バフ掛け、ポリッシュで終了です。

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修復作業の終了です。ギターは蘇りました。音は良いし、弦のビビりも無し、そして弾きやすくなりました。かなり汚れていたので、ポリッシュで磨くと輝きが蘇りました。

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鈴木賢司氏が私の工房までギターを取りに来られました。かなり気に入ってもらい、こんなに嬉しいことはありません。鈴木氏は帰宅されたその日はこのギターを弾いて作曲をされていたそうです。次回のツアーではこのギターを弾くそうです。ギターの眠っていた生命を蘇らせる仕事に就けて幸せです。

3565.jpg

工房では私が製作したギターも試奏してもらいました。ポジティブな感想を頂戴し、本当に嬉しかったです。

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3567.jpg

数日後、鈴木氏から連絡があり、あるバンドに飛び入りで参加するから観に来ないかというお誘いでした。もちろん観に行ったのですが、Simply Red での大ステージとは違い、小さいステージで間近に観る鈴木氏のギター演奏は最高でした。バンドが演奏する音楽はファンキーなもので、鈴木氏は Fender の1951年製 Nocaster を弾かれていました。Nocaster というのは、Broadcaster から Telecaster に名前が変更になる僅かの間に作られたモデルです。ヘッドにはモデル名がありません。Nocaster と真空管アンプの間にあるのはワウワウだけで、生の音を活かしたファンキーなギターが最高でした。

3568.jpg

これで1964年製 Gibson Southern Jumbo の修復作業の3回シリーズはおしまいです。

いろんなギターを修復していますが、また機会があれば、シリーズとしてご紹介します。ではまた。



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  1. 2016/10/22(土) 10:02:19|
  2. リペアー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

知らなかった!

鈴木賢司氏のお名前をはじめて知りました。ギター少年だった私としては
全く知らなかった事がお恥ずかしい。細身の身体で013〜の弦とは@@!
011でもヒーヒー言ってる私と違いプロはさすがに違いますね。
  1. 2016/10/23(日) 17:11:13 |
  2. URL |
  3. サルタンスイング #DL0dExLA
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

奥村健治

Author:奥村健治
アメリカでギター製作を学び、現在イギリス・ロンドンにてアコースティックギター製作に励んでおります。長崎県佐世保市出身

Santa Cruz Guitar Company, Bourgeois Guitars, Lowden Guitars の英国でのリペアーマンもやっています。

www.okumuraguitars.com
www.okumuraguitars.tumblr.com
https://twitter.com/okumuraguitars
https://instagram.com/okumuraguitars/

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