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奥村健治アコースティックギター製作 IN ロンドン

ロンドン在住の個人製作家によるギター製作ブログ

トップとバックのアーチ

現在数本製作中のギターの内、一本のトップ接着が昨日終わりましたので、その工程とそれに関するお話をしたいと思います。

スティール弦のアコースティックギターには、大まかに言うと2種類あります。ひとつは厚い板を削り出してアーチを作るアーチドトップ、ジャズでよく使われ、通常トップの穴はFホールです。もうひとつは、アーチドトップに対して表面が平らなフラットトップ。穴は丸いサウンドホールです。私が製作するのは後者のフラットトップです。
表面がフラットな為、フラットトップと呼ばれるようになったのですが、実は、現在のフラットトップの多くはフラットではないのです。勿論、フラットに作る製作者もいますが・・・。私の知る限り、ナイロン弦のクラシックギターの表面はフラットだと思います。(クラシックギターは専門ではないので、間違っていたらすみません)

私が20年ちょっと前にギター製作学校で習った時の表面は完璧にフラットでした。私はアリゾナの学校を卒業後、ギター製作者のメッカと呼ばれるサンフランシスコ郊外に引越し、1991年の末に日本に帰国するまで、自分の工房でギターを作っていました。その頃は、まだだれもトップにアーチをつけていなかったと思います。トップにアーチをつけるという話を聞きだしたのは、確か90年代になってからだと思います。私もアーチのつけ方を知りたくて、2001年、10年ぶりにアメリカを行き、ヒールズバーグ (Healdsburg) のギターフェスティバル、メーカー、個人製作者の工房を訪ねて、その方法を学んで来ました。

一般的なアーチ度は、トップが25フィート半径、バックが15フィート半径。25フィート半径とは25フィート(約7.5メートル)を半径として描いた円周の一部ということです。メーカーによっては、トップを30フィート、バックを12フィートとしているところもあります。

ところで、アーチの利点とは何でしょうか。それは何と言っても、その強度です。通常、弦を張った時に6弦のスティール弦にかかるテンションは約60キロと言われています。凄い強さですよね。ギターの表面はこの強さに耐えなければなりません。それもその時だけではなく、極端に言えば、半永久的にです。表面がフラットなギターには、様々な問題が起こっていました。強い力が、ボディの中央で弦を留めているブリッジを持ち上げ、ネック方向に引っ張ろうとします。そこで起きるのが、ブリッジとサウンドホールあたりの凹み、そしてブリッジの後ろのボディのお腹の膨らみです。いわゆるS字現象です。これが原因で弦高が上がり、弦が押さえにくくなってしまいます。
しかし、トップにアーチをつけることで、この問題がなくなりました。なくなるというと語弊があるかもしれませんので、少なくなったと言っておきましょう。物理の時間に習ったかもしれませんが、アーチというのは強い力に耐えれる形です。四方八方にある力でアーチを押そうとすると、その力が中心に集まり、アーチは微動だにしないということです。
私達の身の回りを気にして観察していると、アーチの利点を活かしているものが多々あると思います。橋などの建築物は良い例ですね。これは自分で観察していて気づいたのですが、自動車のボディもアーチの利点が活かされていると思います。勿論、猛スピードでぶつかれば簡単につぶれてしまいますが、軽い衝撃だとフラットな鉄板よりアーチしている鉄板の方がそう簡単に凹まないと思います。自動車のボディの表面はどこも滑らかなカーブを描いていて、凹んでいるところなんてありません。それに対して、電車などのフラットな鉄板のボディを見てみると、表面は滑らかではなく、出ているところもあれば引っ込んでいるところもあります。これがアーチの素晴らしさだと思います。

ちょっと言い忘れましたが、トップ、バックの裏側に接着するブレイス (Brace) の接着面も同じアーチにします。

トップにアーチつけるようになってからは、ネック角やブリッジの高さの数字が安定するようになりました。
ギターは芸術品、工芸品、骨董品である前に、仕事を遂行すなければならない道具だと思います。

0014.jpg
トップの接着面出しです。25フィート半径のドーム状に凹んでいるディスクにサンドペーパーが貼ってあり、型にはまったボディを両手で持ち、車のハンドルを動かす感覚でサンディングします。
モーターを付けて回し、サンディングするビルダーやメーカーは多いですが、私はちょっと時間が掛かっても自分の身体を信用します。良い上半身の運動にもなりますし・・・。やはり機械は時間の短縮にはなりますが、少しの油断で削り過ぎるので、この作業では使いたくありません。

0015.jpg
こんな感じで接着面が削れます。

0016.jpg
接着準備完了です。

0017.jpg
クランプをいっぱい使って接着中です。

0018.jpg
型からはずしたところです。

0019.jpg
25フィート半径のテンプレート(型)でトップの表面をチェック中。
滑らかなカーブで殆ど隙間なしです。

0020.jpg
トップと同じように、バックもバッチリです。

0021.jpg
トップにストレート定規をのせると、カーブしているのが分かります。

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  1. 2009/12/02(水) 13:33:26|
  2. 製作工程
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

>私の知る限り、ナイロン弦のクラシックギターの表面はフラットだと思います。

私の知る限り、すべてのクラシックギターのトップはドーム化されています。
製作者によって、サイドとの接触点からドームさせている場合もありますし、
カフリングは直角で、中央部のみドーム化されている場合もあります。
もし興味がおありでしたら、ロイ・コートナル氏の「メイキング・マスター・ギター」という
書籍をお読みになってみてください。
  1. 2010/08/06(金) 05:45:10 |
  2. URL |
  3. えるびー #HZ3qD0i6
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

えるびーさん、コメントありがとうございます。

大変失礼致しました。専門分野でもないのに勝手なことを書いてしまいました。
思い込みは怖いですね。いい勉強になりました。
今後とも、宜しくお願いします。

奥村
  1. 2010/08/06(金) 09:33:45 |
  2. URL |
  3. 奥村健治 #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

奥村健治

Author:奥村健治
アメリカでギター製作を学び、現在イギリス・ロンドンにてアコースティックギター製作に励んでおります。長崎県佐世保市出身

Santa Cruz Guitar Company, Bourgeois Guitars, Lowden Guitars の英国でのリペアーマンもやっています。

www.okumuraguitars.com
www.okumuraguitars.tumblr.com
https://twitter.com/okumuraguitars
https://instagram.com/okumuraguitars/

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